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2012年05月26日

海外生活のススメ(113)  年金基金

 中国は、4月にQFII(適格海外機関投資家)の投資枠を従前の300億ドルから一気に800億ドルに引き上げると発表した。QFIIは、海外からの証券市場への投資を規制している国が、段階的に海外の金融機関に資金投入するのを認めていく制度だが、この決定により海外から中国A株への投資が徐々に増えることになる。

 そもそも、中国がA株に対しQFII制度を採用したのは、海外の機関投資家が株に疎い中国の投資家を食い物にするのを防ぐためであり、この制度により中国の株式市場は、海外の機関投資家の汚い手口から守られて来た。しかしここへ来て、まだ市場全体の割合からすればわずかだが、投資枠を一気に拡げる政策に転換した。

 ただ、これは中国の投資家が株投資に慣れて、海外の機関投資家に騙される可能性が少なくなったからではない。中国の年金基金が、近年の高いインフレ率によって目減りしているので、運用の多様化を考えざるを得なくなり、海外の資金を入れて株式相場に参入するリスクを下げ、運用を確実にしようとしているのである。

 年金基金の運用方法については、近く規則が発表される見通しである。今後はまず、広東省で試験的に株式投資を行い、それも18社のファンド会社が計画案を提出し、全国社会保障基金理事会がその中から管理会社1社を選出して行う。どこかの国では、天下りのど素人が巨額の年金基金をほぼ消失させたが、中国は海外の資金を利用して自国の年金資金を捻出しようとしている。


写真)  川の向こうは北朝鮮(丹東)


2012年05月19日

海外生活のススメ(112)  景気下振れ

中国の景気が急速に悪化していることが、ようやく認識され始めた。大手の金融機関、シンクタンクなどほとんどの調査機関が中国の景気は底堅いと表現していたが、街角の様子を見れば景気がかなり悪化していることは明らかだった。数字だけから景気を判断すれば、実体が現れるまでにどうしても時間が掛かってしまう。

PM I (製造業購買担当者指数)は、政府筋の調査では4月のPMIが連続5ヶ月上昇し13ヶ月来の最高だったが、同時に発表されたHSBCのPMI速報値は49.1で6ヶ月連続して50を下回った。両者の数字が余りにかけ離れており話題になったが、HSBC の発表が実体に近いことは誰にも分かった。景気の悪い話は、さらに不景気風を煽りそうだから控えられたのかもしれないが。

しかし、第111回中国輸出入商品交易会(広州交易会)の輸出成約額が前期比で4.8%と大幅に低下したこと、4月の貿易統計では、輸入の伸びが前年比0.3%増加、輸出も前年比4.9%増と大方の予想を遥かに下回ったこと、前4ヶ月の中国国有企業の利益総額が、前年比で8.6%減少したこと、銀行の新規貸付額の伸びも低下してきていることなど、景気回復力に対する懸念を高める内容が相次いだ。

こうなれば、何とかしなければならないだろうと思われていたが、最近、経済成長を維持するため、金融、政府支出などの政策調整がなされ始め、諸政策が打ち出されている。今は中国に行き詰って欲しくないので、それらの実効性を期待するが、一方で政策が上手く行って国民が怠け者になるのもどうかと思う。少なくともどちらかが良くないと悲惨な状況になるのは、いろんな国の状況から明らかなので、政策が褒められるようならまだマシだろうが、、、。


写真) 丹東


2012年05月08日

海外生活のススメ(111)  中国衰退論

最近、メディアには「中国衰退論」の論調が現れており、中国は人口メリットや改革メリットがなくなり、資源環境や経済体制は持続不可能であり、遠からず危機が発生するとの見方を伝えている。確かに、今までのこうした成長要因はやがて消えてしまい、その替わりはありそうにない。

その上、不動産政策は大きな社会的歪みを生み出し、鉄道事業も大きく躓いてしまって、体制や計画の見直しが不可避の状況となっている。また、今後は一人っ子政策による諸弊害が考えられ、経済発展の鍵となる技術開発、生産性の向上も今の教育制度や国民性からして望みが薄い。

今後、何をもって経済成長を維持するかは、ビジョンとしては構造調整を推し進めることだろうが、その具体的な内容はいずれも問題山積で、実現困難なものばかりである。ただそうであれば、最早中国の未来は非常に厳しい状況かというと、そう断定できるものではないと思う。

理由は、まず最も懸念された不動産価格が沈静化に向かっており、徐々に正常化されていることである。次に、地方都市の開発、保障型住宅の建設など投資の潜在力があるし、資源開発、灌漑事業など手を付けていない部分も多い。また、豊富な外貨を利用した海外の資源、農地への投資が活発であり、社会を維持する条件の確保が進んでいることや、電気・電子製品がコモディティ化しており価格競争できることも大きい。さらに経済の構造調整が自主的に進まない構造であるが、いざとなればそれらを断行できることは自由主義国にない強みである。


写真)  美食街のレストラン